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蓮の国(LotusLand)

近衛秀一の読書感想文が中心のブログ。

感想「凶笑面」(北森鴻、新潮文庫)

読書(小説)

 

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)

 

 

 「異端の民俗学者」・蓮丈那智の元には様々な調査依頼が届く。彼女は助手の内藤三國と共にフィールドワークに向かうが、そこでは陰惨な殺人事件が…。

 これは、民俗学推理小説を組み合わせた連作短編集です。

 

 

 冒頭に「諸星大二郎先生の『妖怪ハンター』に捧ぐ」とあり、探偵役の蓮丈那智の異名が「異端の民俗学者」からも分かるとおり、これは北森鴻諸星大二郎妖怪ハンターシリーズ(最近は稗田礼二郎のフィールドノートと題されているそうですが)のオマージュとして書いた作品と見ることができます。

 それは、諸星大二郎の漫画「妖怪ハンター」に登場する主人公で考古学者の稗田礼二郎が、その突飛な研究対象故に「妖怪ハンター」と言われるところからも分かります。

 

 では「小説版妖怪ハンター」なのか、というと、さにあらず。

 決定的に違うのは、この「凶笑面」が推理小説であるというところでしょう。調査に向かった先々で謎めいた殺人事件が起こり、それを蓮丈那智が解決する。それはただ事件を解決するのではなく、その「民俗学的」な謎の解明をも意味している…という、なんとも楽しいストーリー構成になっているのです。

 推理小説が好きで、諸星大二郎妖怪ハンターシリーズが好きな僕にとっては、もうドンピシャの作品でしたね。こういう土俗的な話には強く惹かれます。

 もちろん、民俗学を学ばれている人にとっては、「飛躍しすぎ。現実と違う」でしょう。僕も自分の専門としていることが小説やマンガに出てくると「現実と違う」と感じますが、それはフィクションだ、と割り切ることにしています。限りなくリアルに近づいた物語が、面白いとは限らないと思ってます。

 

 短編集なのでさらりと読めますが、良かったのは「女の家」という言葉から、悪しき風習と奇怪な祭祀が現代に意外な形で蘇る「不帰屋」、禍々しい笑みを浮かべた面の理由を解いた表題作「凶笑面」などですね。続編もあるようで、もうちょっと読んでみます。