蓮の国(LotusLand)

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感想「オデッサ・ファイル」(フレデリック・フォーサイス、角川文庫)

 

オデッサ・ファイル (角川文庫)

オデッサ・ファイル (角川文庫)

 

 

 主人公のミラーは、ちょっとした記事を新聞社や雑誌に売りつけて暮らすルポライター。彼がある日、ひょんなことからユダヤ人の老人が残した日記を手にし、運命が変わっていく…。

 

 フレデリック・フォーサイスの名作。僕は「ジャッカルの日」を読んで、あまりの緻密さと濃密なストーリーにハラハラされ、この人だったら何読んでも面白いはずだと感じました。

 この「オデッサ・ファイル」は、第二次大戦後、ナチスの親衛隊(SS)を海外へ脱出させることを目的とした、謎の組織「オデッサ」と、イスラエルの特務機関、はたまたエジプトへ亡命した旧ナチス幹部たちとの抗争を描いています。

 

 あらすじにも書きましたが、主人公が手にした老ユダヤ人、ザロモン・ダウパーの日記から、強制収容所の所長にして「リガの吸血鬼」というあだ名の「エドゥアルト・ロシュマン」が今でもドイツに潜伏し、悠々自適の暮らしをしていることに驚き、憑かれたようにロシュマンの行方を追っていきます。ナチスの残党を助ける組織「オデッサ」は、生粋のドイツ人である主人公がなぜ自分たちの過去の犯罪を追ってくるのか分からないまま、暗殺者を差し向け徐々に主人公に迫る。主人公はそれを運のよさとギリギリの判断でかわして、ロシュマンを追い詰めていく…。主人公補正はあるにしても、そのドキドキ感が素晴らしいんですよね。 

 

 出版された当時は、元SSの隊員でユダヤ人の大量虐殺に関与したアドルフ・アイヒマンがイスラエルの諜報機関モサドに逮捕されたことが記憶に新しく、リアリティも更に増したでしょう。

 さらに、主人公によって徐々に追いつめられていく「エドゥアルト・ロシュマン」は実在する人物ですし、物語の中盤で、ミラーと接触し彼に情報を与えるサイモン・ヴィーゼンタールは、先ほど書いたアドルフ・アイヒマンをはじめ、多くのナチス関係者の逮捕に関係した人物なのでした。

 

 思えば「ジャッカルの日」も、ド・ゴール大統領を暗殺しようとする「ジャッカル」と、フランス警察との攻防というリアリティのある小説でしたけど、この「オデッサ・ファイル」も異様にリアリティがあって舌を巻きました。ここまでハラハラドキドキさせる小説はそうないのではないでしょうか。