蓮の国(Lotus Land)

いろいろ雑多に書いてます。

感想「江戸しぐさの終焉」(原田実、星海社新書)

 

 

江戸しぐさの終焉 (星海社新書)

江戸しぐさの終焉 (星海社新書)

 

 

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 「江戸しぐさの終焉」は、「江戸しぐさの正体」の続編です。「江戸しぐさ」とその怪しさについては上記の記事を参照のこと。歴史の専門家で無くても容易に「怪しさ」が見抜ける、という話をやりましたのでご参考までに。

 著者の原田さんは同じと学会の会員で、友人でもありますので、応援の意味も込めてこの記事を書いているわけですが…

 

 さて本書は、江戸しぐさの検証から更に発展して、江戸しぐさの提唱者であった「芝三光」氏の人物像や、彼を取り巻く人物、そして「江戸しぐさ」の普及に貢献してしまった公共広告機構文部科学省などの「罪」に言及しています。

 

 まず「江戸しぐさ」の事実上の創始者である「芝三光氏」の怪しさについて。

 自分の経歴を語るのにホラをまじえていたとか。「家族の庶子で実の父は外交官」などと言っていたそうな。「古史古伝」(古事記よりも古いといわれる古文書)の1つで、かなり破天荒な「竹内文書」の所有者であった竹内巨麿は自身を「庭田大納言のご落胤」などと称していたようですね。芝三光氏も似たようなものです。自身の生年すら諸説あるそうだし、「柳田国男が取材に来た」とか、「東都茶人会」が元だとか、怪しい話がばんばん出てきます。

 

 そして、きわめつけは、前書でも触れていますが「コインロッカー・ベビー」を養子にし、「江戸しぐさ」で教育して立派な「江戸っ子」にさせる、という構想、というより「妄想」を語っている。どこぞのカルト教団に似たようなのがありますが。

 

 しかしこの、「日本の古いものを見直す」という動きは、保守といわれる方々の興味をひどく刺激したようで、「親学」で知られる高橋史朗氏もこれを支持してしまっているし、埼玉の神社庁では江戸しぐさの冊子を作って配る(しかも2015年。江戸しぐさに懐疑的な声が高まってきた頃)、という暴挙を行ってしまっている。彼らの行為も、著者は冷静に批判しています。

 

 高橋史朗氏は、日本の占領下に「戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画」(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)があった、と主張している1人でもあり、私(近衛)としてはこっちのほうが気になるところです。なんか「四国空母化計画」みたいで怪しげでしょ。

 

 それはともかく。

 前著「江戸しぐさの正体」が出た時、私は喝采を叫んだものです。「江戸しぐさ」の虚妄がネットで話題になっていても、ネットをあまり見ない人は知らない。まあそもそも「江戸しぐさ」を知らない人がまだまだ多いと思いますが、知らないからこそ「良い話」として信じてしまう。

 「江戸しぐさの終焉」は、「江戸しぐさの正体」の続編であり、前著を読まないとわかりにくい部分が多いと思います。2冊読まれることをおすすめします。その前に、江戸しぐさを支持する立場の本も読んでおくといいかもしれません。