読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

蓮の国(LotusLand)

近衛秀一の読書感想文が中心のブログ。

感想「鍵のかかった部屋」(ポール・オースター)

 今年は「海外文学を色々読んでみよう」と思ってます。

 何故かというと、以前「読みたいけど挫折しそうな本」Twitterでいろいろ呟いたのですが、その全てが海外文学だった。もちろん、これまでも小説はいろいろ読んできましたが、ミステリとホラーに偏ってた気がします。2年ぐらい前から村上春樹を読み始めて、少し免疫がついてきたので。

鍵のかかった部屋 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

鍵のかかった部屋 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

 

  てなわけでアメリカの作家、ポール・オースターの「鍵のかかった部屋」。ニューヨーク三部作の最後の作品だそうですが、話は連続していないし、登場人物も別人だそうなので。ニューヨークを扱ってるから「三部作」なのかな。

 

 ライターを生業としている主人公は、友人のファンショーの妻、ソフィー・ファンショーから夫が失踪したという連絡を受けます。その後、小説家志望だったファンショーが残した大量の原稿があることが分かり、友人の意志を継ぐべくその原稿を出版社に持ち込むが…という話。その先まで書いているブログも有りましたが、私はこの辺でとどめます。

 

 全体的に靄の中を歩いている感じで、なんともいえません。読後感も、夜の森の中を歩いていて、ようやく出口が見えたと思ったら、人気のない真っ暗な集落にたどり着いた、という感じで、最後の最後まで不思議な小説でした。

 作品の中に秘められているのは「自分とは何か」という問いなのではないかと思います。主人公はファンショーの原稿を出版社に持ち込み、無事出版されます。読者が、「ファンショーという名前ではあるが、本当はファンショーなど存在せず、主人公のペンネームではないか」と思い込む、という話があることが、それを裏付けているんじゃないかと。「自分」と「他人」は、実は曖昧なのではないか、という問いかけが奥底に秘められているのかな、と感じます。

 

新装 ぼくを探しに

新装 ぼくを探しに

 

 

 今だと批判されそうですが、「自分探し」という言葉が流行った時代がありました。シルヴァスタインの「ぼくを探しに」という絵本もありましたね。

 

 何かが足りない
 それでぼくは楽しくない
 足りないかけらを探しに行く(「ぼくを探しに」より)

 

 こういう本もありますが…。

自分探しが止まらない (ソフトバンク新書)

自分探しが止まらない (ソフトバンク新書)

 

 

 この「鍵のかかった部屋」での「ファンショー」は、主人公との友達であり、ソフィーの夫である小説家志望の男。幻想でもなんでもなく、そこに存在します。しかし、主人公は、ファンショーの足跡をたどる中、その「ファンショー」の存在を考えてしまう。

 

 ニューヨークという巨大な街の中で、主人公は「夢」のような奇怪な靄に囚われながら懸命に生きていく…正直難解でしたが、読み終えた後、静かな感動のようなものがありました。他の本も読んでみようかなあ。