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蓮の国(LotusLand)

近衛秀一の読書感想文が中心のブログ。

感想「ダンス・ダンス・ダンス」(村上春樹)

 

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

 
ダンス・ダンス・ダンス〈下〉 (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス〈下〉 (講談社文庫)

 

 

 性懲りもなくまた村上春樹を粛々と。

 これは初期の作品「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」の続編。「1973年のピンボール」はまだ読んでませんが、私は「羊をめぐる冒険」を先に読んだので若干違和感がありました。

 

 ただ、この「ダンス・ダンス・ダンス」を読む頃には、村上春樹の文体とか話の展開とか、いろいろなことに慣れていたので、さくさく読み進めることができました。

 まず名前。村上春樹ははっきりとした人物名をつけるのが嫌なようで、「鼠」とか「キキ」とか、あだ名のような名前で語られます。「羊をめぐる冒険」を最初に読んだ時、唐突に「鼠」が出てきた時は何の話なのかと思ってしまいましたが…。

 

 「ダンス・ダンス・ダンス」のあらすじを簡単に。

 前回の「羊をめぐる冒険」で、人生における大きな悲しみを経験した主人公である「僕」は、吸い寄せられるように「羊をめぐる冒険」でも登場した「いるかホテル」を訪れます。当時のホテルは既になく、経営者も変わっていましたが、名前は「ドルフィン・ホテル」とほぼそのままでした。そこの受付の女の子が気になっちゃうのはご愛敬(村上春樹の小説ではよくあることらしい)。

 その「ドルフィン・ホテル」で、「僕」はある人物と再会。「踊り続けるんだよ」という、その人物の言葉に導かれるように、「僕」は様々な人物と出会っていくのですが…という話。

 主人公はライターですが、なぜか「休暇」だと言って仕事をしません。ちょいとしたつまみを作ってビールを呑んだり、スパゲッティを食べたり、同級生だった「五反田くん」と一緒にステーキを食べたり、女を買ったり(!)…という悠々自適な生活。少女のおもりをさせられたり、謎の殺人事件に巻き込まれたり…まあ、いろんな「出会い」と別れを経験します。

 

 まあ…私(ブログ主である近衛)は推理小説を学生の頃にたくさん読んだせいか、「謎は解決されるもの」という考えが頭にあったんでしょうね。それで、「羊をめぐる冒険」の展開に面食らったのでしょう。「こいつ冒頭に出てないじゃんか!」とか「あの謎はどうなったのよ」とか。「ダンス・ダンス・ダンス」でも、ネタバレになりますが、「謎」はほとんど解明されないままストンと終ってしまいます。「なんでやねん」とツッコミを入れたくもなりますが、不思議と、心に響くものがあった。

 

 どうにも、なんとも言えない感情です。センチメンタルな感じ。

 

 私は主人公と年齢が近いせいもあってか、読んでいる最中に感情移入しすぎて、上巻を読んだ後はしばらくぼーっとしてしまった。自分と主人公であるところの「私」との区別がつかないというか、境目が曖昧というか…。現実世界に戻るのにちょっと時間がかかりましたね。

 そして、多用される現実なのか夢なのか分からない描写。昔なら、私は「これは何かの伏線だろう」「著述トリックでは」と思ってしまったところ(笑)。前述したとおり「慣れて」いたので、「ああ、村上春樹の小説ではよくあること」と思いながら読み進めることが出来ました。

 

 私なりの、村上春樹の小説を読む(というか楽しむ)コツは、あまり考えずにざっとストーリーを追うことですね。あまり意味を考えちゃいけない。いや、「答えがある」と思いながら読むと失敗する、というような意味で…。

 

 読んだ順に書けば「羊をめぐる冒険」「ノルウェイの森」「風の歌を聴け」「中国行きのスロウ・ボート」と読んで、この「ダンス・ダンス・ダンス」が一番好きかなあ。