読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

蓮の国(LotusLand)

近衛秀一の読書感想文が中心のブログ。

感想「さよならタマちゃん」

さよならタマちゃん (イブニングKC) さよならタマちゃん (イブニングKC) (2013/08/23) 武田 一義

商品詳細を見る

 「さよならタマちゃん」(武田一義、講談社)を読了。

 著者は35歳、あるマンガ家のアシスタント。妻と飼い犬とともに静かな日々を過ごしてきたが、ある日、精巣腫瘍という病気になってしまう。精巣のガンは、早期ならば除去手術の後に一週間程度入院すれば終わりなのだが、彼の場合は、肺に転移していたため、抗癌剤での治療を受けることとなった。このマンガは、彼が入院してから退院するまでの日々をつづったもの。

 当然、アシスタントの仕事は中断を余儀なくされる。抗癌剤の副作用は凄まじく、吐き気、食欲不振、味覚異常…あまたの症状が、彼の体と心を蝕んでいく。しかし、同じ病室の患者たちと会話を楽しんだりもするのだった。

 この感想を書いている私(近衛)も、7月の終わりから9月の初めまで、左膝のケガにより入院を余儀なくされてしまった。連載は入院前から読んでいたが、単行本化するというニュースを聞いた時、出来れば入院中に読んでみたいと思っていた。しかしそれはかなわず、退院してから本屋で購入した次第。だから、どうしても著者と自分を重ね合わせて読んでしまった。  当然、著者の方がはるかに大変なのだけど、そこはお許し願いたい。

 まず、「どうして俺が」という絶望。  著者は酒もタバコもやらないのだから尚更。  そして、病気が治るのか、再発しないか、職場に戻ることが出来るのか…著者の不安は増すばかり。ほのぼのとした女性的なタッチだが、抗癌剤の苦しみ、襲いかかる不安、全てが生々しい。

 しかし、そうした負の要素とは別に、感動させられてしまうシーンがいくつもある。他の癌患者や医者、そして忙しい看護師たちとの触れ合いの中で、生きることを見出していく。

 これは「ただ病床で描いたマンガ」ではない。ストーリーの緻密さ、登場する人物、なんとも言えない光を放っている気がする。