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蓮の国(LotusLand)

近衛秀一の読書感想文が中心のブログ。

書評『葉隠三百年の陰謀』

読書(時代小説)
葉隠三百年の陰謀 (徳間文庫) 葉隠三百年の陰謀 (徳間文庫) (1994/07) 井沢 元彦 商品詳細を見る

 『葉隠三百年の陰謀』(井沢元彦、徳間文庫)読了。

 幕末の佐賀藩主で、名君として知られた鍋島閑叟が、化け猫に襲われ 近習が喉を噛み切られて死亡する、という謎の事件が起きた。化け猫は龍造寺高房と名乗ったという。閑叟は、期待している若い侍・大隈八太郎に探索を命じる。大隈は、 龍造寺と鍋島の因縁、そして『葉隠』の陰謀を知ることになる…。

 

 いわゆる「歴史ミステリー」というジャンルである。井沢元彦はデビュー作『猿丸幻視行』など、 歴史上の人物が探偵役をつとめる歴史ミステリーを書いてきたが、本作は大隈重信の若き 日々を描いている。大隈は当時の尊皇思想や、外国の制度などに触れ、天皇の権威を将軍が 簒奪しているのではないか、という考えに突き当たる。そして、それを「龍造寺家」を簒奪した 「鍋島家」と重ねてしまうのだ。

 戦国時代、龍造寺家の重臣であった鍋島直茂沖田畷の戦いで、龍造寺家当主の隆信は戦死して しまい、その息子は病弱であった。鍋島直茂は、豊臣秀吉から龍造寺家の名代を命じられ、後に 龍造寺家は衰退していく。龍造寺家から鍋島家に佐賀の実権が移るのは、「自然な流れ」と言われるが、 本当にそうなのだろうか?大隈は、また悩むのである。

 

 さて、佐賀といえば「化け猫」。龍造寺と鍋島の因縁に、化け猫が絡むのが有名な「鍋島化け猫騒動」である。 本作は、この事件と化け猫騒動をうまく絡め、物理的なトリックも使っている、一粒で二度美味しい小説 と言えよう。謎がだんだんと解かれていくさまは見ていて楽しい。登場人物紹介があればもっと 分かりやすいかな、と思うが…。