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蓮の国(LotusLand)

近衛秀一の読書感想文が中心のブログ。

書評『一夢庵風流記』

一夢庵風流記 (新潮文庫)一夢庵風流記 (新潮文庫) (1991/09) 隆 慶一郎 商品詳細を見る
 『一夢庵風流記』(隆慶一郎新潮文庫)読了。  戦国の世、誰もが立身出世に憧れ、そのため様々な瑣末なことに神経をすり減らしていた頃、自分の思うまま生きた人間がいた。前田慶次郎利益、前田利家の親戚に当たる彼は、生来「かぶき者」であった。権力者を罵倒し、秀吉の面前では猿の真似をしてみせる。武芸にも秀で、果し合いに来たかぶき者を瞬殺するほどの豪腕の持ち主でもあった。そんな彼が、周囲を引っ掻き回しながら、戦国時代の終わりを一陣の風のように駆け抜けていく。  非常に清々しい小説で、読んでいて久々に「終わらないでほしい」と思った。そして読み終わった後も、彼の物語がずっと続いていくようなそんな気分だった。漫画版である『花の慶次』は読んでいたのだが、こちらのほうはなかなか手が出ず、今更読んでしまったが…。  とにかく、前田慶次郎からにじみ出るかっこ良さ。若々しさ。気持ちよさ。男気。これが、この小説の全てである。正直な心と心のぶつかりあい。この魅力に、捨丸や骨という忍び、直江兼続結城秀康らが、憧れて仲間になっていくさまは圧巻の一言だ。  陰謀を巡らしに巡らすような話も好きだが、こういう小説も好きである。歴史をよく知らない、小難しくて面倒だ、という人にもすすめられる、エンターテイメント小説だろう。