読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

蓮の国(LotusLand)

近衛秀一の読書感想文が中心のブログ。

書評『食肉の帝王』

食肉の帝王 (講談社プラスアルファ文庫)食肉の帝王 (講談社プラスアルファ文庫) (2004/11/19) 溝口 敦 商品詳細を見る
 『食肉の帝王 同和と暴力で巨富を掴んだ男』(溝口敦、講談社プラスアルファ文庫)読了。  ハンナングループ総帥にして、元大阪府知事太田房江国会議員鈴木宗男、山口組、更には元横綱と、様々な人間が恐れをなした男、浅田満。大阪府羽曳野市の同和地区に生まれた彼は、同和利権と暴力を背景にして、食肉業界の「帝王」となっていく…。ノンフィクションライターの溝口敦が、このおぞましい人物を切れ味鋭く描く。溝口氏の筆致は強く抗議するような形が多い。…当たり前なのだけど。  中川一郎鈴木宗男などの国会議員(溝口敦は鈴木宗男を『浅田満の使用人』と呼ぶ)、そして羽曳野市の市長や府知事まで手なづけ、同和利権で税金を優遇されていた浅田が、2004年のBSE問題から一気に牛肉偽装を行い、国民の税金を掠めとっていく姿は恐ろしくもあり憎らしい。同和のみならず「利権」というのは気持ち悪いし、ここまで癒着していたのかと身震いもし、この国に改めて絶望してしまう。  よくもまあ、こんな本を世に出せたものだ、と驚いてしまう。溝口氏の文章はしんぶん赤旗などを引用しながら、浅田満の金脈の流れと、様々な人物に鼻薬を嗅がせて骨抜きにしていくさまが、少々細々と書かれているため、難解な部分も多くイメージがつかみにくいところもあったが、労作だと思う。  どうしても、佐野眞一が書いた『カリスマ』と比較してしまう。
完本 カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」〈上〉 (ちくま文庫)完本 カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」〈上〉 (ちくま文庫) (2009/10/07) 佐野 眞一 商品詳細を見る
 これは、ダイエー創業者の中内功の評伝で傑作なのだが、佐野眞一のクセのあるどろどろした書き方が、本書をピカレスクロマンとして読ませてしまう。溝口敦はあくまでも「事実」として書き、佐野眞一は「物語」として書いていたのか(もちろん自覚は無いと思うけど)。