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蓮の国(LotusLand)

近衛秀一の読書感想文が中心のブログ。

感想「武士の家計簿」(磯田道史、新潮新書)

 

武士の家計簿―「加賀藩御算用者」の幕末維新― (新潮新書)

武士の家計簿―「加賀藩御算用者」の幕末維新― (新潮新書)

 

非常に面白かったので勢いでレビュー。

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感想「凶笑面」(北森鴻、新潮文庫)

 

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)

 

 

 「異端の民俗学者」・蓮丈那智の元には様々な調査依頼が届く。彼女は助手の内藤三國と共にフィールドワークに向かうが、そこでは陰惨な殺人事件が…。

 これは、民俗学推理小説を組み合わせた連作短編集です。

 

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感想「オデッサ・ファイル」(フレデリック・フォーサイス、角川文庫)

 

オデッサ・ファイル (角川文庫)

オデッサ・ファイル (角川文庫)

 

 

 主人公のミラーは、ちょっとした記事を新聞社や雑誌に売りつけて暮らすルポライター。彼がある日、ひょんなことからユダヤ人の老人が残した日記を手にし、運命が変わっていく…。

 

 フレデリック・フォーサイスの名作。僕は「ジャッカルの日」を読んで、あまりの緻密さと濃密なストーリーにハラハラされ、この人だったら何読んでも面白いはずだと感じました。

 この「オデッサ・ファイル」は、第二次大戦後、ナチスの親衛隊(SS)を海外へ脱出させることを目的とした、謎の組織「オデッサ」と、イスラエルの特務機関、はたまたエジプトへ亡命した旧ナチス幹部たちとの抗争を描いています。

 

 あらすじにも書きましたが、主人公が手にした老ユダヤ人、ザロモン・ダウパーの日記から、強制収容所の所長にして「リガの吸血鬼」というあだ名の「エドゥアルト・ロシュマン」が今でもドイツに潜伏し、悠々自適の暮らしをしていることに驚き、憑かれたようにロシュマンの行方を追っていきます。ナチスの残党を助ける組織「オデッサ」は、生粋のドイツ人である主人公がなぜ自分たちの過去の犯罪を追ってくるのか分からないまま、暗殺者を差し向け徐々に主人公に迫る。主人公はそれを運のよさとギリギリの判断でかわして、ロシュマンを追い詰めていく…。主人公補正はあるにしても、そのドキドキ感が素晴らしいんですよね。 

 

 出版された当時は、元SSの隊員でユダヤ人の大量虐殺に関与したアドルフ・アイヒマンがイスラエルの諜報機関モサドに逮捕されたことが記憶に新しく、リアリティも更に増したでしょう。

 さらに、主人公によって徐々に追いつめられていく「エドゥアルト・ロシュマン」は実在する人物ですし、物語の中盤で、ミラーと接触し彼に情報を与えるサイモン・ヴィーゼンタールは、先ほど書いたアドルフ・アイヒマンをはじめ、多くのナチス関係者の逮捕に関係した人物なのでした。

 

 思えば「ジャッカルの日」も、ド・ゴール大統領を暗殺しようとする「ジャッカル」と、フランス警察との攻防というリアリティのある小説でしたけど、この「オデッサ・ファイル」も異様にリアリティがあって舌を巻きました。ここまでハラハラドキドキさせる小説はそうないのではないでしょうか。

kindle oasisの「場違い」さ

 電子書籍の話の続き。

konoesyulog.hatenablog.com

  

 前に「iPadは多機能すぎる」と書きましたけど。

 それはAndroidにも言えることです。「本を読みたい」からこのデバイスを使っているので、逆に言えば本を読む以外は使わない、くらいのところまで持って行きたいんですよね。

 動画を見たりSNSでコミュニケーションとったりする必要はない。それは結局、読書に没入できない原因を作るから。じゃあ、アプリを消せばいいのか。一時的な解決にはなりますが、根本的な解決にはならないんじゃないか、などと、いろいろと考えていたわけです。

 

 じゃあ、「本を読む」ことに徹した「Kindle」はどうか。僕はKindle使ったこと無いので、レビュー等で見るしか無いんですけど、Kindle Paperwhiteなんかは高評価が多いし、僕もちょっと気を引かれました。

 

ebook.itmedia.co.jp

 

 価格は1万5千円ぐらい。まあ、これならば乗り換えてもいいかな、と思ったんですが、容量が4GBというのに驚きました。

 

4GB!?

 

 今のところ、スキャンした本のデータが6GBぐらいあります。

 入らないじゃん。

 

 そしてつい最近には、それの上位版というKindle oasisが…。

gigazine.net

 

 Kindle Paperwhiteより、バッテリーが長持ちしたとか。

 

 まず金額ですが。

 ¥35,980(Wi-Fi、キャンペーン情報付き)

 ¥43,190(Wi-Fi+3G、キャンペーン情報なし)

 

 んー、まあこれで容量は増えたのなら、ちょっと気になっていたのですが。

 

 4GB。

 

 えええええええええええええ。

 そこは変わらないのかよ…。

 

 僕のように、「持っている本をスキャンして電子化して読みたい」人は、やっぱり現状のまま(iPad)なんでしょうか、とガッカリ。

 Kindle(アプリ)で買った本もあるけど…なんか、なあ…。

 

「蓮の国」の意味

 

 このブログは以前「静かな生活」というタイトルだったんですが、いろいろ考えて今のタイトルに落ち着きました。

 

 元ネタは、イギリスの作曲家シリル・スコットの同名曲から。シリル・スコットはあまり知名度のない作家だと思います。名前を初めて聞いた方も多いでしょう。イギリス生まれですが、作風はフランスのサティやドビュッシーのような、ちょっと印象主義っぽい感じの曲が多いです。僕も曲を聞いた時はてっきりフランスの作曲家だろうと思っていました。

 

 知名度が無いせいか、CDもほとんど出ていません。輸入盤はいくつかあるみたいですが。日本だと、「イギリスの作曲家たち」とか「ピアノ名曲集」とか、そういうコンピレーションアルバムに入ってることが多く、シリル・スコットの曲だけを聞きたい僕としてはイライラするところです。

 

 そんなシリル・スコットの曲の中でも「蓮の国」(Lotus Land)は、名曲の1つ。ピアノ曲で、なんともいえない静謐で穏やかな空間がその場に現れます。またこの曲はクライスラーによってバイオリン曲として編曲され、これもまた一品なのです。

 またシリル・スコットは、オカルトや健康食品、東洋哲学などにも興味があった、ちょっとトンデモな人でもあり、その点でも僕は共感するのでした。


James Ehnes (Violinist), Cyril Scott - Lotus Land: Giuseppe Guarneri 'del Gesù', 1737 'King Joseph'


Composer Cyril Scott plays his Lotus Land (orginal recording)

 youtubeニコニコ動画でもいくつかひっかかるので、ぜひ聞いてみてください。

電子書籍を読むためのデバイス、何がいいの?

 僕は5年ぐらい前にiPadを買って、それからしばらくしてiPad Airに乗り換えました。買ったのはこの本がきっかけ。

 

 

 もう6年も前の本になるんですね。まだiPadは第一世代(だと思う)で、Kindleも日本語対応していなかった時代か。

 

 著者の皆神龍太郎さんは、は以前より本を裁断してスキャニングし、電子書籍にするという、いわゆる「自炊」を行ってきたのですが、Tabletが普及する以前はそれをパソコンで読む以外の方法がなかった。iPadKindleの発売と同時にそれを手に入れた著者が、自分がどうやって「自炊」を行ってきたか、そして電子書籍到来後、読書の方法は一変するのではないか…という、本好きにはたまらない本です。

 

 僕は「と学会」に入った後、皆神さんに電子書籍のノウハウをいろいろ教えてもらって影響を受け、裁断機とスキャナ、そしてiPadを買って、これまで100冊ぐらいの書籍を電子化してきました。裁断機は確か中国製の大きなもの。以前はカッターで切っていたのですが、あまりにも時間がかかるので。

 スキャナはScanSnap。去年買い換えた。すっごく使いやすいです。

 

富士通 FUJITSU ScanSnap iX500 (A4/両面/Wi-Fi対応) FI-IX500A

富士通 FUJITSU ScanSnap iX500 (A4/両面/Wi-Fi対応) FI-IX500A

 

 

 iPad Airは2年前に出た機種(たぶん初代)、64GBで9.7インチ。ケースは紐がついていて肩に引っ掛けられる形のもの。

 かなり快適で不満はなかったのですが、使い続けるに従っていろいろ悩みも出てきたので、ここにずらずらと書いてみたいと思います。

  1.  多機能すぎて困る
  2. iOSへの不満

 まず1、僕は電子書籍リーダーとして使っているので、他の機能ははっきり言えば要りません。アプリは「i文庫HD」と「Kindle」だけあればいいんです。機能が多いとtwitterやったりFacebookやったりして時間つぶしてしまう。僕の意志が弱いのか。

 Kindleに買い換えようかと思ったのですが、容量が少なすぎて使えないんですよね…。

 

 2ですが、iTunesで同期をとるのがちょっとわずらわしい。ファイルを直接フォルダに放り込みたいんですが、iPadの中がどうなってるかわからない。

 

 かといって、買い換えるのもなあ…と思いつつ、まだ使い続けてます。

感想「江戸しぐさの終焉」(原田実、星海社新書)

 

 

江戸しぐさの終焉 (星海社新書)

江戸しぐさの終焉 (星海社新書)

 

 

konoesyulog.hatenablog.com

konoesyulog.hatenablog.com

 

 「江戸しぐさの終焉」は、「江戸しぐさの正体」の続編です。「江戸しぐさ」とその怪しさについては上記の記事を参照のこと。歴史の専門家で無くても容易に「怪しさ」が見抜ける、という話をやりましたのでご参考までに。

 著者の原田さんは同じと学会の会員で、友人でもありますので、応援の意味も込めてこの記事を書いているわけですが…

 

 さて本書は、江戸しぐさの検証から更に発展して、江戸しぐさの提唱者であった「芝三光」氏の人物像や、彼を取り巻く人物、そして「江戸しぐさ」の普及に貢献してしまった公共広告機構文部科学省などの「罪」に言及しています。

 

 まず「江戸しぐさ」の事実上の創始者である「芝三光氏」の怪しさについて。

 自分の経歴を語るのにホラをまじえていたとか。「家族の庶子で実の父は外交官」などと言っていたそうな。「古史古伝」(古事記よりも古いといわれる古文書)の1つで、かなり破天荒な「竹内文書」の所有者であった竹内巨麿は自身を「庭田大納言のご落胤」などと称していたようですね。芝三光氏も似たようなものです。自身の生年すら諸説あるそうだし、「柳田国男が取材に来た」とか、「東都茶人会」が元だとか、怪しい話がばんばん出てきます。

 

 そして、きわめつけは、前書でも触れていますが「コインロッカー・ベビー」を養子にし、「江戸しぐさ」で教育して立派な「江戸っ子」にさせる、という構想、というより「妄想」を語っている。どこぞのカルト教団に似たようなのがありますが。

 

 しかしこの、「日本の古いものを見直す」という動きは、保守といわれる方々の興味をひどく刺激したようで、「親学」で知られる高橋史朗氏もこれを支持してしまっているし、埼玉の神社庁では江戸しぐさの冊子を作って配る(しかも2015年。江戸しぐさに懐疑的な声が高まってきた頃)、という暴挙を行ってしまっている。彼らの行為も、著者は冷静に批判しています。

 

 高橋史朗氏は、日本の占領下に「戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画」(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)があった、と主張している1人でもあり、私(近衛)としてはこっちのほうが気になるところです。なんか「四国空母化計画」みたいで怪しげでしょ。

 

 それはともかく。

 前著「江戸しぐさの正体」が出た時、私は喝采を叫んだものです。「江戸しぐさ」の虚妄がネットで話題になっていても、ネットをあまり見ない人は知らない。まあそもそも「江戸しぐさ」を知らない人がまだまだ多いと思いますが、知らないからこそ「良い話」として信じてしまう。

 「江戸しぐさの終焉」は、「江戸しぐさの正体」の続編であり、前著を読まないとわかりにくい部分が多いと思います。2冊読まれることをおすすめします。その前に、江戸しぐさを支持する立場の本も読んでおくといいかもしれません。